港都KOBE芸術祭 開幕! アート鑑賞船編
神戸開港150年を記念して『港都KOBE芸術祭』テーマ「時を刻み、豊かな広がりへ」が、神戸港・神戸空港島を会場に30日間開催される。
会期は9月16日(土)~ 10月15日(日)
このような芸術祭としては短い会期であるが、内容は大変充実したものとなっている。
このイベントの大きな特徴は”みなとまち””神戸港”という神戸ならではの魅力を最大限に活かして、神戸港を象徴する港湾施設等で会場展開する。
この芸術祭の大きな特徴に、アート鑑賞船に乗らないと鑑賞ができない作品もあり、船の上から神戸のまち並みと六甲山の山並みを背景に鑑賞しながら楽しめること。(約45分のクルーズ)
また、神戸への玄関口となっている神戸空港をはじめ、神戸港の各ターミナル施設などのポートライナー沿線に作品が展示されている。
神戸開港150年の歴史の中には、ハイカラな文化風土が形成されたとともに、戦災や震災などもあり、語り尽くすにはむつかしい歴史がある。作品は芸術性とともに社会的メッセージも多く含んでおり、観るものを惹きつける。
もうひとつの大きな特徴は、多様な市民参画で「神戸アートクルー(KOBE ART CREW)」が結成されて、芸術祭を共に盛り上げ創り上げている。メンバーの”自主的な発案”で広報活動や出展作家の作品制作補助などさまざまな活動を展開している。
〇 鑑賞エリアのマップづくり、まち歩きツアーの実施
「ベビーカーで歩くには」「どこから良い景色を見られるか?」等の公式マップ掲載の難しい情報を「神戸アートクルー」ならではの視点で発行。(公式サイト掲載、またカモメリア等で配架)
また、観光ボランティアや神戸マイスターが参画して、まち歩きツアーを開催する。
海(遊覧船から見た作品)
今回は、アート鑑賞船からみえる作品の簡単なご案内。
最初は陸からも鑑賞できるポートアイランド北公園の作品。
作者のコメント紹介付き
西村正徳 「O₂ひまわり/Thank-You Presents to Oxygen」
神戸にとって震災復興を象徴する花『ひまわり』をモチーフに、工業用酸素ボンベのみを使用した作品。
我々が恩恵を受けている酸素は植物が放出したもの、それを蓄えるための酸素ボンベが『O₂ ひまわり』に姿を変え、自然界と呼応しあうという思いである。
そして神戸港開港150年の年号を刻んだ150本の『O₂ ひまわり』はここに咲き誇っている。
ひまわりの花言葉は「あこがれ」「あなただけを見つめる」「熱愛」「情熱」。
あなたにとって大切な年号の「O₂ ひまわり」を探してみてはいかがでしょう。
ドットアーキテクツ 「UNDER THE BRIDGE」
都市計画に基づき全てが用途に区分けされた空間をほぐし、公共とも私とも言えない場をつくり出すことで、都市空間の中にあるヘタ地活用の可能性を提示する。ドットアーキテクツは、建築設計業務の他に、「いっちょお好み焼きでも焼いてみるかというメンタリティ」を大切にし、「誰もが使えるコテのような道具」を使い、「切って混ぜて焼いて裏返すという少しコツのいるお好み焼き的スキル」で作り上げる空間を各地で展開してきた。今回の場所は、神戸市北公園、神戸大橋の袂。「UNDER THE BRIDGE(橋の下)と名付けられた仮設のクラブでは、見ず知らずの人たちが憩い、語らい、酒を飲み交わし、音を聞く、そんなフィジカルな出会いをもたらす空間でもある。
海から見える、光る「UNDER THE BRIDGE」の看板は私たちにそこに新しいゾーンが開かれたことを教えてくれる。
神戸元町にあるギャラリー・ライブスペース・カフェが一体となったお店「space eauun」と協働しながら、会期中は主に土曜日、日曜日にパーティーを開催する予定。
小曽根環 「shakkei-kobe port」
木目が持つゆらぎのリズムをテーマに制作を続けて38年。2016年の神戸での個展で、画廊の大きな窓ガラスにライブイベントで、白い水性インクを用いて木目を描きました。安藤忠雄氏建築の画廊でしたので、窓ガラスの向こう側にコンクリート壁面が透けて見え、ガラス面の白い木目との関わり合いがとても面白く感じました。
これをきっかけに、透明アクリル板に白い木目を描き、透けて見える向こう側の景色を借景してテクスチャーとして取り込む”shakkei(借景)”シリーズが始まりました。
港都KOBE芸術祭では、神戸大橋の麓や、神戸空港ビル屋上フェンスに作品を設置し、神戸港の絶景を借景する作品となっています。
小清水漸 「150年の水を漁(すなど)る / Gathering the water imbibed with 150 years of history
良港の条件は幾つかあるだろう。風を避け、波を除けるに適した地形の津であること。波止場の水深が深いこと。そして何より良質の水を豊富に提供できることが、最重要の条件であるに違いない。長い船旅には大量の水が欠かせないからである。
神戸の水は味良く腐りにくいという評判が、海を越えて来る船乗り達の間には行き渡っていたらしい。確かに神戸の水は旨い。古くから兵庫に酒造りが盛ったのも、豊富で旨い宮水が有ったからにほかならない。旨い水は船乗りや杜氏を呼び寄せるばかりでなく、この地に生きる人達の日々の暮らしを支える基盤であった。水の得られぬ土地に人は住めない。
22年前の夜明けに、多くの命を奪った阪神・淡路大震災の時にも、人達は家族友人の安否を気遣いながら先ず水を求めた。そして多くの井戸が惜しむことなく皆に供され、水の存在と人の思いやりに、皆手を合わせたに違いなかった。
港が開かれて150年、神戸の水は150年分の船乗りの渇きを潤し、数えきれぬ人達の生活と命を繋いできた。今150年の水に想いを馳せ、支えられてきた旅と生活と命の膨大な記憶を紡ぐ作品を作ろうと思う。150個のガラスの器は水を生む果実のメタファーであり、掌を寄せて合わせた形の舟は、人の営みの象徴でもある。明るい光にきらめくガラスと水、海と空に漕ぎ出す舟の影が、無数の記憶と物語を紡ぎ出して行って欲しいと願う。
西野康造 「風になるとき2017」 /Harmony with the Breeze 2017
「そのむこう」/ The Other Side
神戸港開港150周年記念芸術祭に参加することになった。会期は9月16日から10月15日までの一か月間。私の作品展示場所は、岸から離れた海の上。大きな船を繋留する2個の係船杭の上である。彫刻家の人生の中でまず経験することのないロケーションである。
私は長年彫刻家として作家生活を送ってきた。自分の心の素直な部分を大切に、偽らざる行動をしようと少なからず心がけてきた。時代の流れに翻弄される事なく、ひたすら自分の内から自然と湧き出すもの、にじみ出てくるものを待ち続けていた。その行為を継続していくには、世にあふれる情報から距離を置き、身を自由な場所に置いておく必要があった。時に独善に陥ることもあったが、心をふるいにかけ、それが体内に静かに沈殿するのを待った。そんな繰り返しをしてできたものが、良くも悪くも、私の作品になったと思っている。
神戸港の象徴とも言えるこの特殊なロケーションに、何を作ればよいのか、いつもと同じように、自然な方法で考えてみた。時間はかかったが、何とかにじみ出てきたものが、今回の作品たちである。この作品に私の思いをわずかに乗せて、皆さんにお伝えできればありがたいと思っている。
井上廣子 + 井上凱彦建築計画事務所 「風の回廊 / Corridor of wind」
神戸は古来より人々や船舶が往来し、世界へ開かれた日本有数の港都であり、又、国際交流を通じて多彩な文化を培ってきた都市でもありました。現在、世界は人種差別や格差社会の狭間で変貌しようとしている状況にありますが、そうした中、海港は人々の未来への入り口のシンボルとして大きな意味を持ちはじめました。かつて、風の埠頭と呼ばれた新港第二突堤から多くの日本人がブラジルへ移住をしましたが、ここを作品設置場所に選び、この地から世界へと旅立っていった人々の記憶を踏まえ、神戸から未来への希望を世界に発信したいと思います。作品は神戸港でよく見られるコンテナと子供の写真で構成されています。前者は物ひいては文化を運ぶ港の象徴として、それをユニットに大きな造形物を作成、後者は神戸在住のさまざまな国の子供達の顔写真を拡大してコンテナに貼り込み、国際都市神戸と未来への希望の象徴としています。
新宮晋 ウインドキャラバン / WIND CARAVAN
「ウインドキャラバン」は、2000年から2001年にかけて、新宮晋の風で動く彫刻21点を地球上の僻地6ヵ所の自然の風景の中に設置し、各地の先住民と交流をはかりながら、自然との接点の多い彼らの生き方から、地球の未来の生き方に付いて学ぼうという試みだった。2000年6月、兵庫県三田市にある新宮晋のアトリエ前の田んぼを皮切りに、同年11月にニュージーランド、オークランド沖の無人島、2001年2月にフィンランド北極圏の凍結湖、4月にモロッコ・タムダハトの岩山、7月にモンゴル・ウランバートル近くの草原、11月から12月にかけてはブラジル、セアラ州の広大な海岸砂丘を巡った。各地で先住民やその土地の人々と交流し、子供たちと一緒に多くのワークショップを行った。例えば、子供たちと三田で植えた米を秋に収穫し、それをニュージーランドで巻き寿司にしてマオリの子供たちに食べてもらうという、子供から子供へのメッセージが繋がり、最終的に世界を結ぶリンクが構成された。
そのウインドキャラバンのコンテナが出発した神戸港で、今回時空を超えて初めて展示する機会を与えてもらえたことに、新宮は深く感謝している。
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